第4 説得のゴールは,訴訟物の存or否であること
1 説得のゴール
(1)説得のゴール
説得のゴールは,ほぼ10割,2つのどちらかである。(却下を求めることは……。)
code:ゴール
ⅰ 原告訴訟代理人の場合:訴訟物が存在すること
ⅱ 被告訴訟代理人の場合:訴訟物が存在しないこと
(2)ゴールが決まっているありがたさ
説得のゴールが決まっているというのは,文章を書く上で,実はすごく楽なことである。
文章を書くとき,一番頭を使うのは,ゴールとして何を設定するか,である。しかし,最終準備書面では,それが決まっている。したがって,頭を使うのは,そのゴールに,どのように持って行くかだけである。この点で,最終準備書面の起案は,実は楽。 (3)訴訟物の存否には決まり方がある
加えて,説得のゴールである訴訟物の存否には,決まり方がある。その決まり方を頭に入れておけば,訴訟物が存在するor存在しない,ということを説得するために,何と何と何を言わないといけないのか,ということが,自ずと明らかになる。
2 訴訟物の存否の決まり方
(1)訴訟物は,目に見えない。
訴訟物は,権利。
権利は,目に見えない。しかし,事実なら目に見える。
そこで,事実を見ることで権利を見るためのシステムが作られた。
code:【権利認識システムの仕組み】
ⅰ 権利は,権利変動の組み合わせで決まる。
ⅱ 権利変動は,法的三段論法で決まる。
(2)訴訟物は,権利変動の組み合わせで決まる。
【権利変動の組み合わせで訴訟物が決まる例】
https://gyazo.com/97935a0edc993d2d4ea5efdb5a8f61b8
https://gyazo.com/09cb5576092889aa2200857cd8de60b8
https://gyazo.com/8ad2a47e33931ad04c8df9bf45d01a63
(2)権利変動は,法的三段論法で決まる。
権利変動は,法的三段論法によって決まる。
これは要するに,法によって,事実と権利変動をつなぐ,というもの。
事実と権利変動は,異なる世界の出来事だから,その間を超えようと思えば,事実と権利変動を媒介する法というものが必要になる。
法は,要件→効果という形で定められており,要件は事実を,効果は権利変動を定めているから,法によって,事実の世界から権利変動の世界へジャンプすることが可能になる。
【法的三段論法】
https://gyazo.com/19b2265d74c03a1422534c5f852a7d28
障害
消滅
阻止
事実をいくら重ねても,権利は動かない! 権利が動くためには,「事実」と「法」が両方そろわないといけない。
たとえば,不法行為から50年が経っても,不法行為に基づく損害賠償請求権は,その事実だけでは,消えない。権利が消えるには,民法724条という法が適用されなければならない。